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レーティングサイトから将棋ソフトの2017年を振り返る

将棋ソフトのレーティングがよくわからないということで素人が試行錯誤しながら始めたこのサイト、2016年末くらいには一応その当時発表されていたほとんどのフリーソフトのレートを計測し、当初の趣旨は貫徹したので終了しようかなと思っていました。しかし、その後も将棋ソフトは熱く発展し、気がついたらもう一年続けていました。年末ですし、今年何があったかまとめておきます。 (1)レート向上:2016年は技巧・魔女の公表、コミュニティーの協力によるApery評価関数の開発など話題の多い一年で、レーティングサイトとしても次から次へと登場する強いソフトの登場に対応するのが大変でした。2016年のはじめのトップソフトはレートの基準にしているApery_twig(大樹の枝)=R3250でしたが、年末には浮かむ瀬(現在R3661)が最強になっていました。2017年も強いソフトの登場は後を絶たず、現在の最強はやねうら王とApery_sdt5評価関数の組み合わせでR4120です。(野良も入れるとaperypaqのR4150)2016年のレート上昇が約R400, 2017年はR500近い、2年かけてR900も強くなりました。R900というとアマ5級が5段になるくらい、ソフトはいったいどこまで強くなるのでしょうか。レート向上の原因は私見ですが 2016年:技巧登場、魔女による探索エンジンの改良、Aperyのコミュニティー参加型ぞうきん絞り 2017年:elmoによる学習部の革新、SDT5で優勝したponpokoや5位入賞したQhapaqに代表されるやねうら王チームの頑張り。シボレーによる野良評価関数の出現あたりが頭に浮かびます。一方で、これらの発展を動機付けていたのは、圧倒的強者としてのPonanzaの存在だったと思います。今年はフリーソフト勢がPonanzaに追いついた記念すべき一年となりました。 (2)コンポーネント化:これも昨年現れ始めた傾向ですが、その当時Apery評価関数が強かったため、その他のソフト(魔女、やねうら王、うさぴょん2)なども同じ評価関数を使うようになり、探索エンジンの差でソフトの強さを競うようになりました。今年に入るとその傾向はいっそう強まり、探索エンジン、評価関数、定跡のどれか一つだけに特化するスペシャリストが現れ、全体としてフリーソフトのレートが大きく向上しました。探索部はやねうら王、評価関数はelmo→Apery_sdt5、定跡はまふ定跡など。この結果2016年まではソフトの名前に意味がありましたが、現在の最強ソフトは「やねうら王+Apery評価関数+まふ定跡」などのようにアイデンティティーがよくわからないものに変化しました。私としてはレート表のソフト名をどうするか、悩む時代になりました。 (3)評価関数開発の素人への解放:elmo登場以降、磯崎氏によりやねうら王学習部が改善され、プログラマーでない素人でも簡単に評価関数を自作できるようになりました(シボレー、キメラなど)。今年のソフトのレート向上に大きなインパクトを与えました。一時レート表のトップにいたyaselmo(野生の読み太とelmoのキメラ)、まふさんや透。さんの一連の評価関数など野良評価関数が無視できない存在となりました。 (4)序中盤のハッキング:レーティングには直接影響しませんが、昨年末に出現したまふ定跡(最初の頃は私も計測でお手伝いをしておりました)により、ソフトの序盤はかなり変化しました。まふ定跡はこれまでになかったほど非常に多くの棋譜を網羅し、評価関数の弱点を補完、不利になることなく中盤までノータイムで指すことができるようになりました。序盤における時間の節約はソフトの大会においては終盤に時間を潤沢に使えることを意味しています。この考え方は第五回将棋電王トーナメントで準優勝したshotgunの手法にも応用されました。 (5)Deep Learning系ソフトの登場:これまでのソフトはCPUをメインに使いGPUはほとんど使っていませんでしたが、PonanzaやmEssiahなどいくつかのソフトはDeep Learningの手法でソフトの強化を行うためCPUよりもGPUが主に使われるようになりました。今年最後に発表されたAlpha Zeroは、Deep Learningによる学習でこれまでのソフトよりもずっと強くなりうる(もちろんDeep Mind社の潤沢な計算資源を背景にしていますが)ことを衝撃的に証明しました。来年はGPUの時代になるのでしょうか。 (6)最後になりましたが、レーティングサイトを運用する身として大変ありがたかったことは、レート計測に協力していただいている方々(@snooze1_mitsuyaさん, 透。さん、池泰弘さん、@Rota_JPさん, @tibigameさん,ebifraouさん、hammer brosさん、takeh_tさん)の登場です。 皆様のご協力なしには今年一年を乗り切ることは難しかったと思います。貴重なお時間とコンピュータ資源を提供していただきありがとうございました。

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